女ハムレット

ハムレット・シンドローム / 樺山三英」というライトノベルをネット上で偶然知って興味が湧いたので、この本の翻案元である「刺客 / 久生十蘭」、更に翻案元の翻案元である「ハムレット / シェイクスピア」まで遡って3冊とも読んでみたところ、またもや鳥居みゆきと絡めて妄想する病気が発症してしまいました。妄想垂れ流しは一先ず措いといて、とりあえず各作品の軽いあらすじや思ったことなど。

ハムレット (新潮文庫)

ハムレット (新潮文庫)

父である先王ハムレットの亡霊に会ったことで、先王がその弟であり王を継いだクローディアスに毒殺されたことを知ったハムレットが、狂気を演じつつ復讐を狙うという話。正確なあらすじはハムレット - Wikipediaへ。

戯曲なので短いのかなと思いきや、一人一人のセリフが非常に長いことにまず驚きました。ここまでの饒舌セリフラッシュは僕の読書暦では「パンク侍、斬られて候」以来。初めてのシェイクスピアだったのですが、このエントリの後半に垂れ流す妄想のきっかけをくれたというだけでも忘れられない一冊になりそうです。あと、「あるキング / 伊坂幸太郎」が「マクベス / シェイクスピア」の翻案らしいので、「あるキング」が文庫化したら「マクベス」も合わせて読みたい所。「あるキング」の評判あんまり良くないみたいだけど。

ハムレット・シンドローム」は正確にはプロトタイプである「刺客 / 久生十蘭」と、それを書き直した「ハムレット / 久生十蘭」両方の翻案作品ですが、「ハムレット・シンドローム」の第I章が「刺客」寄りなので、「刺客」のあらすじを紹介します。

かつて「ハムレット」を演じていた小松顕正が、劇の終盤で落下事故に遭う。一命は取り留めるもの記憶障害が起こってしまい、自分はハムレットであると思い込んだまま数十年が経過する。その小松顕正が未だに記憶障害であるのかを確かめるという指令の下、主人公は小松顕正がハムレットを演じつづけている建物に訪れる。(大体合ってると思いますが、あやふやだったのでネットで調べて思い出しながら書きました。)

絶版だったので図書館で借りて読みました。復刊されたら100%買うのになぁ。

プロトタイプである「刺客」のほうが終わり方が衝撃的で好きです。久生十蘭という作家を知ることが出来たことも今回の一つの収穫です。

ハムレット・シンドローム (ガガガ文庫)

ハムレット・シンドローム (ガガガ文庫)

第I章だけを読んでみると一見「刺客」をラノベ風設定に置き換えただけの内容ですが、もちろんそれだけで終わることは無く、読み進めていく内にどれが現実かどれが幻かどれが空想かどれが夢かどれが演技か(略)わからなくなっていきます。ぐるぐる系。翻案元やそのまた翻案元の内容・解釈についても作中で触れられているので、「ハムレット・シンドローム」一冊だけでも楽しめることができるようになっています。


さてここからが妄想。もしかしたらファン内では常識なのかもしれませんが、「鳥居みゆき ハムレット」でググっても目ぼしい記事が見当たらなかったので、恥ずかしげも無く書き殴ります。そのために作ったブログでもあるしね。

ハムレット」を読んでいて一番最初に思ったことが『ハムレットが狂気を演じるのと、鳥居みゆきがまさこキャラを演じるのと似てるなぁ』ということでした。「ハムレットは本当にキ印なのか?それともキ印を演じているのか?もしかしてキ印を演じている内に本当にキ印になったのではないか?」という趣旨の疑問は、そのまま鳥居さんにも当てはまり、ブレイク直後は各所でいろんな議論がされていたと思います。が、「ハムレット」を読んでる時点ではここまで。

本格的に妄想が膨らみ出したのは、「ハムレット」を読み終わって「刺客」を読んでる最中のことでした。数十年前に「ハムレット」の登場人物を演じた人々が、劇外の現在でも「ハムレット」の登場人物と同じ立ち位置に当てはまってる状況を読んでる最中に突然ふと、まさこキャラのショートコント「木下さんシリーズ」での設定が「ハムレット」に似ていることに気付きました。つまり、『まさこ=ハムレット、母(名前設定無し)=ガートルード、木下さん=クローディアス(、視聴者=ローゼンクランツ)』。

もちろん前の父と母が死別して再婚したと確定してはおらず、ただの離婚なのかもしれません。また、結婚騒動があったからか、旦那の家族との関係を絡めた解釈もよく見かけます。が、「木下さんシリーズ」が「ハムレット」を下敷きにして作られたものと仮定すると、色んなパズルのピースが合うような気がするんですよね。ただ、何故ハムレットを女性化したのか?という新たな疑問が増えてしまいますが、それは一旦措いときます。

[1]「まさこ」というキャラ名の由来。「皇室ネタ」を仄めかす背徳感のためではないかというのをよく見るのですが、「ハムレット」の舞台を日本に持ってきたら…と考えると「まさこ」がぴったり当てはまりそうな…。「木下さん」の命名由来まで繋がれば更に良いのですが、今の所クローディアスって10回言ったら木下さんになりそうな事以外は思い浮かびませんでした。

[2]見えないものが見えてしまうというホラー的ボケ。「小島とのコラボカーペット」、「グルモネア」、「ひみつの嵐ちゃん」等でもされてましたが、取り上げたいのは髭男爵ナイトで男爵とロリ子の間の遠い先を見つめて呟いた「お父さん…?」。ハムレットが先王の亡霊を見たシーンを彷彿とさせます。鳥居さん以外の3人がハムレットの中世時代に合ってそうな衣装を着ているのがある意味面白いです。

[3]「夜にはずっと深い夜を」は1つ目の短編「きれいなおかあさん」をどう解釈するかで短編毎の繋がりが変わるんじゃないか?という妄想を少し前に炸裂させましたが、「ハムレット」においても、先王の亡霊が本物なのか?それともハムレットの気が違った結果生み出した幻だったのか?という複数の解釈ができるそうです。さらにこじつけると、「ハムレット」第4幕第5場で本当に狂ってしまうオフィーリアが花言葉に執着するシーンで、「夜にはずっと深い夜を」の華子を思い出しました。

ここまでいろいろ書いておいてなんですが、いくらなんでもこじ付けが過ぎる。さっき措いておいた「何故ハムレットを女性化したのか?」という疑問についても特に解決しそうな理由が思い浮かびません。ただ、恐らく偶然ですが、1920年のドイツ映画に「女ハムレット」というものがありました。いくらドイツ映画狂だからってそこまで昔の映画を見てるわけが…と思ったのですが、この作品どうやら2007年に復刻していたそうで。元々あった「黒まさこ」からいつ「白まさこ」と「木下さんシリーズ」が生まれたのかわからないので、真相は藪の中、私は蚊帳の外。

あと、これらの本を読み終わったのは先週の日曜日なのですが、その直後に2ch大規制が段階解除された反動からか、芸能板鳥居スレで珍しく「おかゆちゃん」キャラについての議論が盛り上がってました。その時に思いついたのが「もし久生ハムレットを女性化したら…」。こじ付けが突き抜けてもはや不謹慎レベル。


上記3冊以外にも「ハムレット」と関連した本を読んだので一応メモ。

新ハムレット (新潮文庫)

新ハムレット (新潮文庫)

太宰治による翻案「新ハムレット」他。亡霊等の噂は全て存在しないという解釈(というより殆どストーリー変更に近いです)で、更に太宰色が強く足されていて殆ど別物になっているので、上記3冊の後に読むのが正解かもしれません。「新ハムレット」以外では「待つ」という掌編が非常に印象的でした。

ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ

ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ

ハムレット」にてクローディアスからハムレットの狂気を見極める役目を与えられる脇役二人を主人公にした戯曲。詳しくはローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ - Wikipediaへどうぞ。