ジョークとトリック〜頭を柔かくする発想〜

ジョークとトリック (講談社現代新書)

ジョークとトリック (講談社現代新書)

他の本を探してる最中に偶然手に取り、偶然目に入った第三章「隠す文化」が気になったため、図書館で借りた本です。最近読んだ小説以外の本では大当たりでした。筆者が日本笑い学会理事・関西演芸作家協会顧問を務める織田正吉氏ということもあり、お笑いをより楽しむための頭を鍛えるのにも最適の本だと思います。公式サイトの紹介ページはこちら。

簡単なあらすじ。第1章「先入観の構造」、第2章「だまされやすさの研究」は、人の先入観や騙されやすさを利用したジョークやトリックの構造や紹介。第3章「隠す文化」は、隠すことによって想像力を刺激する例や、様々なタイプの謎について。第4章「似ることの力」、第5章「しゃれのひろがり」は幅広い分野の様々な言葉遊びの紹介。第6章「逆に見る」は見方を変えることの重要性について。

鳥居みゆきファン的読みどころもちょこちょこあります。第1章には『夜にはずっと深い夜を』の中の『カバのお医者さん』の元ネタかもしれない外国のジョークが紹介されています。また、第6章では、99プラス(除霊回)で鳥居さんがフリップに書いていた「ルビンの壺」の紹介があります(P205)。


夜、ある町の外科医のところへ大怪我をした男が治療を受けに来た。住所をきくと隣りの町から来たという。

「隣の町なら、有名な外科医がいるのに、どうしてわざわざここまで来たんです?」

怪我した患者はこう答えた。

「わたしがその医者なんだ。」(P44-45)

以下は自分戒め用の引用メモ。当たってようが外れてようが、妄想してること自体が楽しいタイプなので、今後もあまり戒める気はないけど。例えば最近は、ヒット(人)エンド(and→end→終わり)ラン(run→走)で、「人は終わり(最期)まで走り続ける」と無理矢理解釈→『いつ死んでもいいように、いつ「ここまで」ってなってもいいように生きたいんです。』というインタビュー発言と繋がった!という妄想をしました。


ジョークの説明ほどつまらないものはないが、(略)(P57)


なにかが隠されているばあい、人はその隠されたものが何であるかを知りたいという欲求を強く持つ。完全に述べ尽くされた情報よりも、一部隠された部分を持つもののほうが訴える力が大きい。百パーセント公開された情報は送り手からの一方通行だが、隠された部分を持つ情報は、受け手がそれを推理や想像によって埋めようとするため、受け手から送り手への方向を加えて二方対面の交通になる。それは情報を受ける側から送る側に回って参加することである。人は、一方的に与えられるよりも与える側に立つことのほうを喜ぶ。(P71-72)


アナロジーの発見はどうやら冷静な論理の構築を忘れさせる力を持つようである。あるいは、わずらわしい論証の必要性を気づかせないほど、似ていること自体が強力な説得力を持っているともいえるだろう。(P186)

困るのは、類似のおもしろさが、たとえ話とおなじようにわずらわしい論理や実証の手続きを忘れさせ、いきなり二つを結びつけたいという衝動を惹き起こすばあいがあるということだ。(P190)